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大阪高等裁判所 平成12年(ラ)757号 決定 2000年9月20日

抗告人 被相続人A遺言執行者 X

相手方 Y

被相続人 A

主文

1  原審判を取り消す。

2  本件を神戸家庭裁判所に差し戻す。

理由

1  本件抗告の趣旨及び理由

別紙書面のとおり。

2  当裁判所の判断

家事審判法第7条が準用する非訟事件手続法第1編の規定中、民事訴訟法の準用を定める非訟事件手続法第10条は「民事訴訟に関する法令の規定中、期日、期間、疎明の方法、人証及び鑑定に関する規定は、非訟事件に準用す」と規定しており、民事訴訟法上の証拠方法である証人、当事者本人、鑑定、書証、検証物の5種のうち、特に「人証及び鑑定」に関する民事訴訟法の規定についてのみ準用を明定しているけれども、家事審判法第7条自体にも「特別の定がある場合を除いて」との除外文言が存在するほか、家事審判規則第7条第1項には「家庭裁判所は、職権で、事実の調査及び必要があると認める証拠調をしなければならない。」、同第3項には「証拠調については、民事訴訟の例による。」と規定しているのであるから、民事訴訟法中、書証に関する規定である同法220条以下(但し、職権調査主義の性質に反する224条を除く)の文書提出命令に関する規定も家事審判手続に準用されるものというべきである。

3  よって、本件本案事件につき文書提出命令を求める本件申立てを不適法なものとして却下した原審判は相当でないからこれを取消し、本件文書提出命令申立ての理由及び必要性の有無につき更に必要な審理、判断を尽くさせるため、本件を原審に差し戻すこととし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 井筒宏成 裁判官 古川正孝 和田真)

別紙 即時抗告状

抗告人 被相続人A遺言執行者

弁護士 X

相手方 Y

平成12年7月7日

抗告人 被相続人A遺言執行者

弁護士 X

神戸家庭裁判所御中

平成12年(日2)第123号文書提出命令申立事件につき、神戸家庭裁判所がした平成12年7月4日付の却下の審判につき、家事審判法7条に基づき、即時抗告を申し立てる。

即時抗告の趣旨

原審判を取消し、「文書所持者a病院は、別紙目録記載の文書を提出せよ」との審判ないし決定を求める。

即時抗告の理由

1)原審判は、家事審判法7条による非訟事件手続法10条の準用から、「人証及び鑑定」に関する規定しか準用されないという形式的な文言解釈により、本件文書提出命令の申立を却下している。対象となる本件文書が本案の乙類事件を解決するためには不可欠であり、かつ、後記のとおり任意には提出してもらえない文書であるからこそ、提出命令を申し立てたものである。しかるになんら証拠の実質的な必要性に触れずに本件申立を却下することは、誠に遺憾である。

被相続人Aの平成9年4月9日付公正証書遺言には、相手方が、平成6年6月11日被相続人に対し暴行し、被相続人に右大腿骨転子部骨折等の傷害を負わせた旨の記載があるが、相手方は被相続人に暴行して骨折させた事実を争っている。上記事実関係を明らかにするためには、被相続人の受傷原因を明らかにする必要があり、被相続人が右受傷のためa病院に入院しており、担当医師にも受傷原因を述べているところから、診療録等はその重要な証拠となるべきものである。

そこで、当職は、a病院に対し、弁護士法第23条の2第1項に基づき照会の申し出をなし、診療録等の送付を依頼したが、同病院からは電話にて、被相続人の遺族全員(少なくとも実子全員)の同意書がなければ照会に応じられない旨の回答があった。しかし、被相続人の長女Bは相手方の妻であり、その同意書を得ることは出来ないことから、同病院に対する文書送付嘱託の申し出をなし、御庁から同病院に対し平成11年12月9日付で文書送付嘱託がなされたが、同病院からは、同文書送付嘱託に対し、平成12年1月4日付で、遺族全員の同意が得られない場合は送付嘱託に応じられない旨の回答があり、同病院からの診療録等を入手することは出来なかった。

2)またこの点を法解釈の面でとらえても、以下のような重大な過誤がある。家事審判法は上述のような準用規定を有しているが、同時に家事審判規則7条は、「証拠調については、民事訴訟の例による」とする。同規定が、家事審判法7条にいう「特別の定め」に該当するかどうかについてはさておき、学説等は、家事審判手続における証拠調については、「証人尋問、鑑定人尋問、検証、書証の取調べ、当事者尋問」が含まれる(山木戸克巳家事審判法42頁、沼邊ら家事審判法講座III-213頁、最高裁民事部・家事審判法の概説20頁、伊東ら・注解非訟事件手続法55頁)、証拠調の範囲、方法を制限すべきでない(綿引ら家事審判法講座I-63頁、昭和37年11月8日法曹会決議・法曹時報14巻12号191頁)とし、最新の裁判官による司法研究報告書である「遺産分割事件の処理をめぐる諸問題」(法曹会平成6年7月25日)においても、「民事訴訟法312条(現行220条)の要件があれば、文書提出命令を出すことができる」とされている。

そうすると、原審判は、法令の解釈適用を誤ったことは明白であり、即時抗告の趣旨記載の審判ないし決定を求める。

別紙

目録

患者名A(大正8年○月○日生・平成11年1月4日死亡)に関する平成6年6月11日から同年7月9日までの診療録、看護記録、諸検査結果表、保険診療報酬請求書控、その他同人の診療に関して作成された一切の資料

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